「葛の葉」
2011年12月14日
葛の葉は三度目の上演となります。
今回も時間の関係上「蘭菊の道行」を上演しないので子別れの場面のみとなります。
前二回は幕切れに宙乗りをしたのですが、中村座にはその機構が現在無いので花道に引っ込む方法をとりました。
この演目は早変わりや曲書き引き抜きや仕掛けが多いケレンと呼ばれるジャンルに分けられがちですが、私は子別れに重点を置いて演じています。
葛の葉姫と狐が人間となっている葛の葉との早変わりは、あまり早いと吹き替えに思われてしまうのでその具合が難しいんです。
前半、一瞬狐を出すところや子供と二人になってから狐としての本音を吐露する部分は義太夫との掛け合いとなりますが、狐言葉や息を詰めての台詞は一番大事なところです。
曲書きは役者さんにとって書き方が皆違い、お客様も楽しみにしているところです。
〈恋しくば〉
恋を書いてからはくしと下から逆に書き上げていきます。
〈たずね〉
たを変体仮名の当という字でかき
つを変体仮名の川で書きあとはねと書きます。
これは常に当たるという気持ちを込めていて、この字を使っている役者さんは私だけだと思います。
〈来てみよ〉
来てはそのまま書きみはミ、よは変体仮名の与
と書いています。
〈和泉なる〉
はそのままですがはるは変体仮名の留に近づけています。
〈信田の森の〉
は左手で裏書します。最後ののは変体仮名の乃の裏書です。
〈うらみ〉
はうらとひらがなで書きみは変体仮名の美の字です。
〈葛の葉〉
は口に筆をくわえますが、子供を抱いていて振り向いて書けないので、やむなく口にくわえるというところを明確にしなくてはいけないと思います。
今回は舞台から子供を保名に渡して消える時に四の切の狐忠信と同じように、飛び込んで消えます。
またそのあとすっぽんから上がる時に木の葉を吹き上げる演出を試みました。
そして少し立ち回りの後に毛抜いという全身白い毛に覆われた狐に引きぬいての揚幕への引込みになります。
テーマを子別れに置いていたので、舞台全体を暗くして、幕切れの引込みも劇場全体を暗くして中村座の小屋の特性を活かす試みをしていましたが、小山三さんが見ていて、古風さがでないんじゃないでしょうかと指摘して下さり、自分自身でもそう思い2日前から、幕切れの照明を全開の明るさに変えました。
「チョンパッ」という言葉がありこれは、幕切れのチョンという拍子木に合わせて、場内を明るくする演出ですが、歌舞伎ではよく用いられます。
新しいことをするのがは好きなので、従来の歌舞伎の常識から外して、子別れの暗い母の気持ちを表現したく照明も暗くしいましたが、やはり歌舞伎は歌舞伎らしさが必要と思い演出を変えました。
曽祖父の初代鴈治郎も公演中でもよく演出を変えていたと聞きますが、それに習ったわけではありませんが少しでもいいものを作りたい気持ちからとご理解下さい。
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私は照明が暗い方を拝見したんですね。明るいほうも見てみたいと思いました・・・。小山三さん、素晴らしいですね。数々の舞台を観ていらっしゃるでしょうから、歌舞伎の知識がいっぱいつまっていらっしゃる。いつまでもお元気で舞台で私たちを愉しませてもらいたいと思っています。
お母さんの気持ち、切ないって感じてしまい、ちょっと涙ぐんでしまいました。
曲書き あらためて意味を教えていただけるとなるほどと思います。本当にここは葛の葉でいつも愉しみにしているところなので、次回また拝見する機会がありましたら、注意してみます。
葛の葉は好きな演目の1つです。
3年前だったと思いますが、大阪で扇雀さんの葛の葉を観劇させてもらいました。
あの時は早変わりの早さに本当に驚き、扇雀さんが2人いるのでは・・・と思ったほどでした。
子別れの場面では切ない気持ちになって、涙を流した記憶があります。3年も前だというのに今でもふと思い出し、あの時に余韻が蘇る時があります。
ずっと、ずっと扇雀さんの葛の葉をもう一度、観劇したいと思っていたので、今回行けないことがとても残念です。
曲書きでは毎回書かれてますが、書いた障子は毎回どうされてるんですか?そのまま処分されるんですか?
北山さん
申し訳ありませんでした。試行錯誤を重ねています。一つのものを生み出すのは大変ですね。
小山三さんは特に色々と教えて下さり感謝しています。いつまでもお元気出いていただきたいですね。
あいさん
東京まで足を伸ばしていただきたかったですが残念です。
今回は宙乗りをしていませんが、母子の別れを全面に出しての演出にしています。
また上演する機会もあると思いますが、その時は是非いらして下さい。
この演目を観るために遠征すると言っても過言ではない位、大好きな葛の葉です
母として、子別れの場面は、胸が引き裂かれる思いになります
これほどまでに、愛情深く、悲しく表現できるのは、やはり、歌舞伎以外ではあり得ない様にも思います
また、舞台になっている場所も、学生時代を過ごしたり、友人がいたりするとても馴染みのあるところ
どっぷりと世界観に浸り、涙を流すことを楽しみにしています
また、松竹座でも是非、演じて頂きたいです
たまねぎさん
葛の葉は好きな演目です。皆さんに楽しんで頂けるように頑張っています。
20日に昼夜拝見しました
葛の葉 最後の狐の衣装にびっくり!他の役者さんで観た時は??帰宅後 筋書き 見たら やはり普通の着物姿
いろいろ あるんですね~
狐忠信でみなれてますが、女狐版の衣装は初めてでした
葛の葉 土産に筋書きに、はさんできました
夜は松席で舞台、花道近くでどの演目も迫力満点でした
昼は桜席 普段見れない人とか物がみれ これまた結構(^0^)
まみさん
ありがとうございます。
コメントが保留状態になっていて見ることが出来ず、すぐに返信できなかったことをお詫びします。
葛の葉は演出がいろいろあり私の工夫です。
金丸座や松竹座では宙乗りもしたんですよ。
伝統は革新から生まれます。