「名前」
2012年12月 9日
8日の終演後再び東京の小日向に向かう。
東京駅に勘三郎の兄貴の付き人元(もと)ヤン(元野君と言って、もとのもくあの芸名で舞台にも出ています)が東京駅まで迎えに来てくれた。哲明(ノリアキ)さんの優しさなんだろう。
ご自宅に着くと昨日納棺されて棺の中で寝ている哲明さん。
もう直接触れない。その横に新しい名前を書いた紙が添えられている。
戒名だ。名前は発表前なので公表は控えますが、哲明さんらしい名前です。
しかし似合わない。と言うよりはまだ要らないはずの名前。
優太(児太郎君)がお疲れ様でしたとすぐにピールを出してくれて又五郎さんと野田(秀樹)さんと笹やん(笹野高史さん)とで静かに乾杯をしていると、仮眠をとっていた好江さんが「ヒロちゃんお帰りなさい」と明るく声をかけ下さる。起こしてしまったことを詫びると「いいの大丈夫」とまた明るく答えて下さる。
宗生(むねお)君(橋之助さんの次男)が豚まんを薦めてくれるのでありがたく頂くが、神楽坂の五十番の立派な物が出てきて戦う羽目になってしまう。
鶴松と国生(くにお)君も出てきて鶴松がすぐに寝て役に立たないと皆になじられて何とか言い訳をしている。
笹やんは明日から青森にロケなので今日が最後だと名残惜しそうにスケジュールを恨んでいる。
野田さん達と他愛もない話でワインが進む。
雅行が戻ってきて場が明るくなり、戒名を見て「なんて読むの読めないよ。」といっているが、読めないより要らないが本心だと思う。
棺にかけられた壺折に小さな焼け目がついていて、お線香の火が飛んだらしいのだけど、名誉の為に犯人は伏せておこう。
雅行がナイルのカレーを出され「こんな時間にここでこれが食べられるなんて」と大喜びでいっきに完食すると「お父さん食べたいだろうな」と一言。
又五郎さんを送る時に「送りません」といってお身内は送るのを控える。
あれは何故だろうという話になり、「喪をその方に送らないためじゃない。その人についていかないためでしょ。」と一番学のある野田さんの意見に一同納得し、その野田さんを送る時に雅行がわざと玄関まで行って「喪(もー)」と言いながら手を伸ばす。
そういうことは哲明さんが大好きだったのでさすが親子だ。
2時になったのでもう一度顔見て退室しようと思い棺の傍の戒名を見たが、誰の名前なんだろう。という感じ。
今朝、京都に向かう新幹線で日経新聞の最終面に掲載された野田さんの文章に、読まなきゃよかったと悔やんでもその時には遅かった。
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まるで小説のような、静かな美しい文章ありがとうございます。
皆様の喪失と哀しみが胸に迫ります。
大人たちが仕事をしている中、少年たちが勘三郎さんを護っていたのですね。
どうぞ、みなさま無理をなさらずに。身体だけは大事にしてください。
改めて、勘三郎丈のご冥福をお祈りいたします。
マトリョーシュカさん
ありがとうごさいます。皆の気持ち哲明さんに伝わっています。