「「狐狸狐狸ばなし」の伊之助」
2013年9月 5日
今日5日は哲明(のりあき)さん(勘三郎さんの本名)の月命日です。
9ヶ月の月日が経ちました。
"伊之助"の話をしながらお兄さんを思い出したいと思います。
そもそもこの「狐狸狐狸ばなし」は初演は山田五十鈴さんの"おきわ"森繁久彌さんの"伊之助"先代勘三郎さんの"重善"三木のり平さんの"又市"で北條秀司さんの手によって昭和36年に書き下ろされた作品です。前記の役者さんにあて書きした作品ですので、その後上演する場合は作者の狙いを役者さんに被せつつ自分になりに人物を造形していかなくてはならない作品ではないでしょうか。原作は大阪梅田が設定されていますので、登場人物ほとんどが関西弁です。後日関東の役者さんが演じるために江戸みやげとして関東に設定を置き換えられました。
今回の私の"伊之助"は哲明さんの造形した伊之助がベースであることは間違いありません。又市を1度、おきわを2度演じていますのでお兄さんの"伊之助"は目に焼き付いています。
お兄さんが新派公演で南座で初演した時偶然見ていて北條先生の中にも面白い作品があるんだなと思っていましたが自分で演ることになるとは想像もしていませんでした。
この作品を歌舞伎でお兄さんが演られて2度目に大阪で上演が決まったのですが、又市役の染五郎さんが出演できないので、誰がいいかなと兄さんに相談された時に、「僕が演りますよ」といったのがこの作品に出るきっかけでした。
今回"伊之助"を作るにあたりまず衣装から入ることにしました。
その理由は、この役は決してお兄さんのコピーになってはいけない役ですので衣裳選びから根本的に自分の"伊之助"像を作ることにしました。見た目が変わるとお客様の印象も変わるのと、自分自身ゼロから造形出来ると考えたからです。
役の設定が上方の役者ということで以前のブログにも載せましたがまず上方和事を演じる時によく使う縞の着物を何枚が揃えてその中から自分のイメージした"伊之助"と色移り(自分の仁に合うかどうか)を考えて縞を2枚選びました。
下2枚です。
実際の舞台ではこうなります。
そして、新規で1枚染てもらいました。
この衣装です。
アップで見ると
分かりづらいと思いますが小紋の柄が、私の替紋の"蝶花菱"になっています。
まずこの色が私の"伊之助"のイメージカラーであり暗闇に映える事も考え、そして柄には遊び心を入れたんです。
舞台写真ですので正確な色が出ていませんが、地色はもう少し明るい色です。
そして最初の出番の姉さんかぶりの手ぬぐいは"中村格子"の手ぬぐいを被っています。
勿論相手役の七之助さんが中村屋ということもありますが、お兄さんと一緒に舞台にいるというか敬意というか色々な気持ちの集合体のようなものです。
この役ではお兄さんも苦労していましたが、<大阪弁>が最大の難関です。
私の家の家系は上方役者ですが、何を隠そう私自身は東京生まれの東京育ちですのでこの"伊之助"は言葉の壁が最も苦労するところです。
しかし、今迄上方の役を多く勤め、義太夫を稽古し関西の友人も増えたことによってかなりその雰囲気は出せたと思っています。
丁寧に聞くと訛っている箇所は多々あると思っていますので今後の課題です。
衣裳も決まり役作りですが、やはりお兄さんの創りだした面白い部分はかなり盗まして頂きました。
おきわに嫌いになったと言われてのけぞるところはそのままです。フグにあたって死ぬところは新しく考えましたが鳴り物さんと息をわせることがポイントだったと思います。
幽霊の引込み「うらめしや」と入れました。お客様に幽霊となるべく思わしておきたかったからです。
その後の"おきわ"七之助さんと"又市"勘九郎さんとのやり取りは日を追うに連れ間とリズムが生まれ作者のイメージに少しは近づいたのかもしれません。
上方の和事の"伊左衛門・忠兵衛・治兵衛・徳兵衛"等を今までに勤めた経験がこの役にも生きたような気がします。
そして共演の皆さんが長年チームを組んでいる皆さんであったことも作品が4日間の稽古にも関わらずまとまった最大の要素だと思っています。
哲明さんがいらしたらまず演じる機会のなかった"伊之助"を勤めたことは正直複雑な心境です。嬉しくもあり、悔しくもあり、寂しくもあり、悲しくもあり、楽しくもあり。
しかし、今もなお見ていてくれると思うと力が湧いてくる気がするんです。
この作品は是非再演したいのと、一度原作どおりすべて上方での上演もしてみたいですね。
その時の重善は鶴瓶さんかも・・・?
写真提供:松竹
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八月は狐狸狐狸ばなしにハマり、夢中になりました。私も観劇するときは、中村格子の手拭いを持つようにしました。
伊之助が鳴り物に合わせて倒れる場面、大好きです。
幽霊になり、重善とおきわを追いかける場面でのくしゃみ、死装束を干している場面や「死ぬ前に染めた手拭い届けて来よ。」の台詞等。伊之助の幽霊っぽい歩き方に、私も本当に伊之助は死んでしまったと騙されてしまいました。
亡者と言われて、唄い出すところも好きです。
舞台で、おきわさんが手拭いを干してましたが。あの扇雀さんの手拭いは、どこかで売られていますか??
こちらの演目も、是非再演して欲しいです。
梅☆さん
観劇ありがとうございます。私の手拭いは非売品なんです。すいません。
「狐狸狐狸ばなし」は再演させて頂きたい演目ですね。
一工夫して再演したいと思います。
「狐狸狐狸ばなし」本当に楽しかったです。伊之助は扇雀さんのためにあるようなお役だと思いました。オチがあるような喜劇のお芝居は、すごく面白かったとしても、もう一度観たいとはなかなか思わなかったりもするのですが、これは又観たいとすぐに思いました。上方バージョンも考えただけでわくわくします。是非、実現をよろしくお願いいたします。
扇雀様
はじめましてm(_ _)m 私も今回、納涼歌舞伎第三部にはどっぷりとハマりまして初回を月はじめに鑑賞できましたのをこれ幸いに、全力でスケジュールの遣り繰りをしまして楽を含めて4回歌舞伎座に見に行くことができました。
扇雀さんの伊之助が大好きになり、一緒に行った友も七之助さん贔屓だったのに扇雀さんのファンになりました。
どの場面も好きですが、亡者亡者ーと歌ってからの勘九郎さんが待ち伏せしているところに提灯を持ってウキウキ気分な登場シーンが思い出しただけでこちらも伊之助笑顔になれます。ちょっと嫌なことがあっても当分乗り越えられそうです。これからも応援いたします!
初めで投稿させて頂きます。
先月拝見しました。扇雀さんの伊之助、楽しかったですよ。フグで死ぬところなど。楽しいお話ですのに、泣けてしまって。どこかで勘三郎さんが観ているような気がしてならなくて。いつまでもこんなんじゃいけないと思うのですが。。。
狐狸狐狸ばなし、一度目は三階から
二度目は千秋楽に一階で拝見しました。
七之助さんのおきわとのやりとり、何度も笑わせていただきました。
ぜひ、またお二人の競演で再演していただきたいと切に願います。
扇雀さんの立役、一部と三部で拝見しましたが、狐狸狐狸は楽しそうに演じられていたように感じて、こちらもとても楽しい気分にさせていただきました。
ありがとうございました。
goldbearさん
ありがとうございます。上方バージョンというか原作どおりを是非演りたいですね。しばしお待ちをお願いします。
祥さん
4回も足を運んで下さり本当にありがとうございます。いつも喜劇を上演出来るわけではないので他の演目でがっかりなさらないで下さいね。東京は11月の国立劇場ですが、10月の名古屋の「西郷と豚姫」も小作品ですがいい作品だと思います。
こゆきまるさん
コメントありがとうございます。見ていてくれていると思います。お気持ちはよくわかります。しかし、前に進まなくてはいけませんから。
でみさん
ご来場ありがとうございました。演じる側の人間が楽しくないとお客様にも楽しんで頂けない典型のような演目ですね。是非再演したいので応援宜しくお願いします。
狐狸狐狸話を初めてみました!扇雀さんが喜劇を演じられているのも初めて見ました(^^)
たまにでる女形らしさや「けったいな味やな~」がツボでした(*^_^*)
今度は名古屋見に行きます!伊之助とは全く変わった役で楽しみにしてます\(^^)/
松竹座で1回 赤坂ACTシアター柿落とし公演で1回見ました。(棒しばりで棒が折れた日の観劇です)
勘三郎さんのイメージが強いこの作品ですが
扇雀さまの言葉を読んでぜひ関西でも見たいと思います。
勘三郎さんもきっと見てくださっていると思います。
月命日 頂いたサインに手を合わせています。
勘三郎さんへの想い書いてくださってありがとうございました。
ちさきっちょさん
ご来場ありがとうございました。歌舞伎の懐の広さは他の演劇に類をみないもので名古屋の演目もバラエティーに飛んで楽しみにして下さい。
にゃんこさん
是非関西での上演を実現したいと思います。お待ちください。
初投稿させていただきます。中学2年生です。
狐狸狐狸話し観させて頂きました。話題になっている言葉も使われていて面白く、楽しませて頂きました!
これからの公演も頑張ってください。
チャックさん
ありがとうございます。狐狸狐狸ばなしは喜劇ですので、これからは歌舞伎の色々なジャンルの演目を見ていって下さい。
狐狸狐狸すごく面白かったです!
小紋の色も、とてもよく映えていて、素敵なので、写真も沢山買ってしまいました。
観劇が楽しみで、家でよく金比羅船々を口ずさんでいたので、母に笑われました(´-ω-`;)
原作どおりのも、いつか観てみたいです。
鶴瓶さんの重善も、もし実現したら面白いでしょうね。
また、さよなら公演の様に、まとめてDVD化されるのでしょうか…。
DVD化を希望します。
ねこさん
ありがとうございます。DVD化は私の一存では決められないのですが、それよりも再演を重ねていきたいですね。