「新しい財産」
2013年10月30日
「今月は財産が増えましたね」
という言葉で「西郷と豚姫」の"豚姫"こと"お玉"の役を評して下さった方がいました。
私に取りましては最も嬉しい表現の1つです。
役者にとって財産になったということは成果が認められたということですので、嬉しいの一言です。
この役はこれまでに延若さん、17代目勘三郎さん、祖父の2代目鴈治郎、先代富十郎さん、そして昨年亡くなった哲明(のりあき)さん(18代勘三郎さん)などが勤めてらっしゃいます。
今回特にリアリティということに焦点を合わせて役作りをしました。
この作品は昭和の歌舞伎ですので、新歌舞伎のジャンルで現代劇に近い感覚で上演されてもいいと思っています。
頭痛で悩んでいる"お玉"がまず薬を飲むところから始まりますが、初日から数日経ってふと苦い薬を飲んだら直ぐに口直しをしたいのではないか、太っている方ってよく何か食べているイメージが有り、火鉢の周りにはいつもお菓子があっていいのではと思いつき、薬を飲んだ直後に饅頭を食べる芝居を増やしました。小道具さんに菓子を入れるものと饅頭を用意してもらい、台詞を言いながら食べることにしました。直ぐに飲み込めるマシュマロも用意してもらい、こちらも時には口にして"お玉"になってみました。台詞に"お玉"はお酒が全く飲めないと言っているので、甘い物には目がないんだと思います。先人で饅頭を食べながら勤めた方は恐らくいらっしゃらないんだと思いますが、今後再演の機会があればこれは続けたいと思っています。
次に厄介なのが京都弁です。舞台は祇園町ですのでやはり言葉は土地の言葉で話さなくてはならないので東京生まれ東京育ちの私はここが問題です。しかし、毎年京都の顔見世に通い、また2代目鴈治郎夫人即ち祖母は祇園町の舞妓ちゃんでしたので、身近に祇園の言葉には接していまいたので何とか"不自然"と言われない程度にはこなせた自信があります。
そして、片思いの西郷さんに心情を吐露する台詞でリアリティというところに重点をおいて毎日勤めていました。台詞の音のボリュームや間合い、話しているうちにどんどん思いがでてしまうしゃべり方。毎日工夫はしていても微妙に変わっています。西郷さんの彌十郎さんがおにぎりを食べる時に最初は正座されていたので、あぐらをかいてもらうように変えてもらいました。くつろいでいる時の距離感が欲しかったからです。
台本に西郷さんを"大夫(だいぶ)はん"と呼んでいる箇所が多々あります。
稽古から台本どおりやっていたのですが、初日が開いてからお客様との距離感に違和感を覚え、"あんさん"とか"西郷はん"に変えて"大夫(だいぶ)はん"の使用を止めました。
この言葉は偉い人の役職を指しているのだと思いますがお客様に音で"だいぶはん"と言っていても西郷さんの事を指していることが伝わっていない感じがしたので変えてしまいました。原作者の池田大伍さんには怒られるかもしれませんがお客様本位で変えてしましました。お許し下さい。
この1ヶ月の公演を経て"お玉"という人が愛らしくもあり大好きになりました。
白鸚の伯父さんと祖父2代目鴈治郎の「西郷と豚姫」の音声だけ残っていて何度も繰り返し聴いていたのですが、舞台が目に浮かび素晴らしいものです。ただ、台詞の無いところでお客様の笑いが起こっいて、祖父が面白いことをしているのでしょうが、それが観られないのが何とも残念です。
いつかは白鸚の伯父さんの孫である染五郎さんと孫どおしで上演してみたいものです。
この着肉を付けて太らせます。
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本当に、本当に
扇雀さんのなさる”お玉さん”が
大好きです
いつもながら、様々な工夫をされ
扇雀さんならではのお芝居を拝見出来て
行って良かったと心から思いました
お玉さんが愛おしくて
涙が止まりませんでした
私は、身近に京都弁を喋る家族がおりますが
扇雀さんが話される京都弁は
本当に自然で
全く違和感がありません
お上手と言うよりも自然なのです
むしろ、東京でお育ちになっておられるのにと
不思議に思います
ちょうど、お饅頭をお食べになるようになさった時に
拝見出来、得をした気分です
西郷さんを思うお玉さんの可愛らしさ・切なさ
それを受け止める西郷さん
正に、究極のラブストーリー
また、是非是非、拝見したいです
それから、教えて頂きたい事が1つあります
お薬を飲まれる仕草がとてもリアリティーがあり
大好きな場面の1つなのですが
あのお薬の中身は何ですか?
差支えがなければ
お教え下さい
お玉さんの着肉、もの凄い量になるのですね。
私は、お玉さんが先代の富十郎さん、西郷さんが
吉右衛門さんという配役で、松竹座で拝見した事が
ありますが、お玉さんがとても愛らしく感じました。
きっと扇雀さんのお玉さんも、可愛かった事でしょう。
いつか関西の劇場で、扇雀さんのお玉さんで上演して
いただけたらと思います。
今年見始めた歌舞伎、偶然扇雀さん出演の舞台を見て、それからずっと気になる役者さんでしたが、西郷と豚姫は、今月は沢山見た歌舞伎の中で一番のお気に入り。どなたか財産になった、と言われるくらいの凄いものをきっと見たのだと思います。歌舞伎という枠以上のものです。私は大阪なので扇雀さんの関西弁はすらすらとお上手だけど、京弁ですね、狐狸狐狸の時に思いました、なので今回はぴったりです。現代劇なら一人芝居、二人芝居でやっても面白いだろうなと。今日はシネマ歌舞伎の鼠小僧を拝見。その昔、遊民社時代に見た野田さんのお芝居のスピード感、セリフの面白さがそのまま歌舞伎に、それに歌舞伎役者さんはそのへんの役者さんよりよっぽど訓練されててお芝居のプロですもん。今後の扇雀さんのご活躍、楽しみにしております、11月は東京我慢してスルー、また12月にお伺い致します。
公演ごとに随分と工夫しながら演じていらっしゃるのですね。感銘いたしました。同世代の歌舞伎ファンで、中学高校も同じなのです。応援しています。頑張ってください。
扇雀さんの豚姫、ほんとにはまり役だと思いましたが
私としては雲の絶間姫がお人形さんのようで色気もあってすごく好きです(^^)
あの演目は歌舞伎初心者の私でも分かりやすくて楽しめました!
扇雀さんの喉の調子が良くないような気がして、心配でした。
また名古屋に来て下さるのを楽しみにしています!!!
たまねぎさん
ありがとうございます。薬の中身は空気です。何も入っていません。お饅頭は本物ですが、薬はお芝居です。
マンゴープリンさん
あれだけ着ていてもまだ足りないような気がしていました。関西の劇場でも是非上演したいと思っています。お待ちください。
tamさん
ありがとうございます。関西弁と京弁の違いも難しいですね。正確なところは正直わかっていないと思います。狐狸狐狸ばなしは言葉に注意していましたが、周りが関西弁出ない芝居で使うと引きづられるのでなおさら難しくなります。また今回は舞台が京都の祇園ですから特に神経を使いました。「鼠小僧」懐かしいです。随分前の事のように思えます。このお芝居は作っていく段階が面白かったんです。野田さんとのやり取りが財産になりました。
12月の「ぢいさんばあさん」楽しみにしていて下さい。お待ちしています。
佐藤徹さん
ありがとうございます。役作りしている時が一番楽しいんです。
ちさきっちょさん
ありがとうございます。舞台で少し咳をしていた時かもしれません。ご心配ありがとうございます。大丈夫です。逆流性食道炎で咳が出る時があるので薬を飲んでいます。名古屋早い時期に伺いたいです。