「忠兵衛「その千日が肝先へ」」
2014年3月22日
今月の「封印切」の忠兵衛の台詞です。
近松の原作では「その千日が迷惑」となっているのですが、玩辞楼十二曲の「封印切」では「その千日が肝先へ」と変わっています。
この台詞の意味は忠兵衛と梅川が死出の旅を決意した後に、周囲からは「おめでとう」とか「お名残惜しい」と言われておえんさんに「そりゃ千日云うても帰らぬこと」と、どれだけ言っても盡きないほど目出度いと言ったのに対しての次の台詞ですが、この忠兵衛の千日は地名の千日前を指しています。当時は大阪ミナミの千日前に刑場があり二人の首がそこに晒されてしまう事を暗示しての返しの言葉になります。
今月務める梅川は先月も兄・翫雀の忠兵衛で務めていましたしもう回数もかなりの数になってきています。
今回は父が相手ですが、82歳という年齢を感じない忠兵衛さんがそこに居るのが藝の凄さだと痛感しています。
そしてこの表題の台詞が私の一番好きな台詞です。
自分の運命に対してのひとりごととでも云うのか忠兵衛の悲運を表す台詞でこの瞬間が忠兵衛の人生を表現していると思っています。
私も忠兵衛は何度も務めていて鴈治郎家にとっては最も大事な演目の1つですので、その演目を父と兄と共演できることは先祖も喜んでくれていると思います。
次回は是非忠兵衛を努めたいのですが、今回の父の幕切れの花道は大変参考になり次回に是非活かしたいと思っています。
忠兵衛を待っている梅川
痴話喧嘩の最中
死を決意したあとの引込み
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「封印切」は、私の若い頃、いろいろな方のを観させていただきましたので、
ある意味「見慣れている」演目でしたが、
今回のは、まさに「純和事」の真髄を観させていただきました。
藤十郎さまの幕切れの七三から花道、毛穴から純和事が滲み出ているようで、
これを今できる方はいらっしゃるのかしら?
扇雀さんしかいない!
できれば、いつか扇雀さんにやっていただきたいと、勝手な願望を抱いておりましたら、
「次回は是非忠兵衛を努めたい」というお言葉を読んでワクワクいたしました。
梅川、ヤラレました。
封印を切ったことを知った直後の「忠さん、どうしよう!」、
扇雀さんの梅川のそれは、忠兵衛に言っているというより、
極限に追い詰められた人間が、それしか発することができない状態の一言でした。
ガツンとヤラレました。
そこまでになってしまったからこそ、死を決意する姿がストンと心に落ちたのです。
封印切を観て、こんなことは初めてでした。
昔は流れでしか見えていませんでしたが、扇雀さんのあの「忠さん、どうしよう!」で、
絶望的状況を肌で感じてしまいました。
梅川の死の決意は本気だなと。
だからこそ「三日なりとも・・・」夫婦でありたいという思いがせつなかっです。
どうしても、「三日なりとも・・・」が、生への未練のような感じがしていたのですが、
扇雀さんのは違いました。
今、思い出しながら書いていてもウルウルしてしまいます。
これだもの、中村扇雀という役者に惚れてしまいます。
博多座に引続きの「封印切」楽しみにしておりました。回りの役者さんが変わるとテンポも変化するんだなぁと感心してしまいました。梅川の可愛い声に、私より色っぽく女性的だと羨ましくなりました。扇雀さんの一途な梅川に引き込まれました。昼の部・夜の部とも贅沢な舞台を観れて良かったです。ありがとうございます。4月も頑張って下さい。楽しみにしております。
じゅんこさん
「わしゃ礼言うて死にますわいな」という台詞を以前は三味線を入れて泣き落としという方法で泣いていたのですが、忠兵衛を務めた時にそれは違うなと感じ、喜びと嬉しさの感情を入れるように変えました。ここは大事なポイントで、あとの芝居の流れがすべて変わります。忠兵衛も次の台詞の「もっともじゃ」が言いやすくなります。とにかくその人物の心の動きを的確につかんで表現することに尽きると思います。
ゆかりさん
「封印切」の忠兵衛は確かにテクニックを非常に必要とする役です。父の忠兵衛はそのテクニックの連発ですので、最高の教科書であることは間違いありません。
今日、歌舞伎座で「封印切」を観させていただきました。
初めてこの演目を観て、梅川は、本当に忠兵衛のことを想って素敵な女性だなと感じました。そんな梅川に心惹かれました。そして、扇雀さんの声から忠兵衛と夫婦になりたいという梅川の気持ちが伝わってきました。「封印切」を観ることができて、とてもよかったです。
あと一日ですが、お身体に気をつけて頑張って下さい。
チャックさん
ご観劇そしてコメントありがとうございます。上方歌舞伎を東京でもっと上演していきたいと思っています。
千穐楽おめでとうございます。
扇雀さんのブログ、そして皆さんとのやりとりを熟読し、予習ばっちり!で観劇させていただきました。
扇雀さんが大切にしていらっしゃる”その人物の心の動きを的確につかんで表現することに尽きる”舞台を目の前にして、息をのんだり、ため息をついたり、涙が流れたり....たっぷりと堪能させていただきました。
扇雀さんの忠兵衛も楽しみです。
国立劇場の”沼津”もそうでしたが、お父様、お兄様との共演で紡ぎ出される”和事”の世界が私は大好きです。(”恋飛脚大和往来”も是非通しで観たいです)
次回が楽しみでなりません!
うりぼーさん
ありがとうございます。和事は型というより空気感なんです。そこが自分で作れるかということ。相手との間合いも毎日変わるので日々の舞台がすべて次つながっていく感じです。