2017年8月記事一覧
「野田歌舞伎」
2017年8月21日
6月名古屋平成中村座公演、7月公文協地方巡業、そして今月の8月納涼歌舞伎公演と休みがなく公演が続きブログを長く更新していませんでした。
久しぶりの書き込みで、まずは今月の歌舞伎座の野田版「桜の森の満開の下」について。
この作品は野田さんが夢の遊眠社時代に書き下ろした代表作の一つです。
かつて野田歌舞伎で上演の予定がありました。
しかしその時には実現せず念願の第四弾の野田歌舞伎での上演となり、勘三郎のお兄さん没後5年の今年、野田歌舞伎の発祥である納涼歌舞伎でついに「桜の森の満開の下」上演の機会にめぐまれました。野田さん自身も新しくなった歌舞伎座での初仕事となります。
今年の「足跡姫」に続き年に2回も野田さんと仕事が出来るのは嬉しい限りです。
歌舞伎公演は25日間休み無しの公演が通常ですので自ずと1ヶ月の残り日数を考えると稽古は4日前後となります。前ということは演目により3日間の場合もあります。
今回の上演にあたり稽古は7/5から始まりました。
8/9という初日を考えると1ヶ月以上前からの稽古は現在の歌舞伎の中では異例であることは間違い有りません。
しかし私自身は公文協の「八代目中村芝翫襲名披露興行」に出演しているため稽古に参加出来ず、7/31迄公演が続くため8/1からの参加となりました。
新作(特に野田さんの作品)は稽古を重ねることで作品が形作られるので参加できなかったことが何よりも残念でなりません。
しかし、公演の合間縫って7/13にすみだパークスタジオに一度参加し、7/21京都府舞鶴公演のあと、大阪松竹座公演終演後に染五郎さんのために野田さん勘九郎さん七之助さん達が東京から1日だけ入り21時から松竹座の稽古場で立ち稽古が行われたところへ電車を乗り継ぎ参加しました。7月中は2回しか参加出来ませんでした。
それでも8/1から参加で初日まで8日間の中で皆に追いついていかなくてはなりません。
けれども芝居の空気感を体に染み込ませるには充分な日にちとは言えないのです。
そして僕が稽古に参加する直前に勘九郎さんが稽古中に膝を痛め彼なしの稽古が3日続き
1日臨時の稽古となり初日迄正直充分な稽古を勘九郎さんとは重ねられませんでした。
それは松竹座にでていた染五郎さんも同じことだったのではないでしょうか。
劇場には8月5日から入ったのですが、そうなるとテクニカルの方へ重点が置かれ、また他にも多くの公演が控え稽古も連日深夜に及び初日を迎えることとなりました。
この作品は過去に野田さんの公では3回上演されています。
私は2度目の公演を大阪中座で見に行っていました。夢の遊眠社公演を初めて舞台を観させていただいたのですがその時の衝撃は忘れません。野田さんの耳男、毬谷友子さんの夜長姫は鮮烈でした。
芝居の全体像を理解できたかというより野田さんの芝居を創るエネルギー、言葉のスピード語句、体の動きに圧倒された印象でした。
今回の野田歌舞伎の意義は計り知れないと思っています。
というのは野田さん自身は将来の古典となることを目指している点です。
これまでの野田歌舞伎3作品ももちろんそうですが亡き勘三郎のお兄さんの存在が合って作品が作られていましたが今回はお兄さん無しで野田歌舞伎の新作に取り組めたことに意義を感じています。
この新しい一歩に参加できたことは私自身にも意義のあることでした。