中村扇雀の公式ブログ

「残暑お見舞い申し上げます」

2018年8月26日

納涼歌舞伎も明日千穐楽を迎えるところまで来ました。

今年の夏は猛暑と自然災害が日本列島を襲い流れてくるニュースに驚かされてばかりで、連日休みなく舞台出演している身としてはお見舞いを申し上げることしかできません。

劇場にご来場くださった皆様には、日常を離れ楽しんでいただきたいという気持ち日々舞台を努めています。

今月の歌舞伎座は二役努めていますが双方とも初役で新しい挑戦をしています。
「花魁草」は平成23年の8月に福助さんと獅童さんで上演され、その時は今回萬次郎さんが努めてらっしゃる"菊岡の女将お栄"で出演していました。昭和56年の初演以来歌舞伎では二度目の上演でした。私自身も知らない演目でしたので初めて台本を読んだ時によく書けている素敵なお芝居だなと感じていました。
昨年の野田マップ公演「足跡姫」を観に来てくれた獅童さんと、終演後飲みに行った時の会話の中に「花魁草」の話が出て、いつか一緒にやりたいねとお互いにこの演目が好きだということを確認していました。
今夏の納涼歌舞伎の演目選定の過程で松竹の方から獅童さんと一幕お願いしますと提案があった時に色々な候補が出たのですが、「花魁草」は両方の気持ちが一致していた演目でしたので松竹の方も賛同して下さり今回の上演となりました。

演ってよかった!
この一言に尽きると思います。北条秀司先生は女性を書くことに長けてらして"お蝶"という役の気持ちの移り変わりが見事に描かれています。毎日演じていて、毎回その日その日の"お蝶"が息吹いています。共演の獅童さん幸四郎さん梅枝さんもそれぞれ役の息吹が感じられ素晴らしい舞台になったのではと自負しています。
獅童さん演じる幸太郎がまた芝居の世界に戻って行ってしまうということを感じ始めてから、その悲しさを相手に隠し続けるところは日々表現が変わっているかもしれませんが、"お蝶"という人物の人生を表現していることは楽しくもあり面白くもあり日々充実しています。
作品との出会いは運命みたいなものですが、いい作品の出会えたと喜んでいます。

「雨乞其角」は若手の皆さんをお客様にご紹介の意味も含めて選ばれた演目です。
私自身も普段あまり共演できない皆との舞台は新鮮です。
この演目は藤間流宗家の演目で藤間会で素踊りで上演されたのみで歌舞伎の演目として衣装とかつらをつけての上演は初めてです。
宗家勘十郎さんが道具に趣向を凝らしてくださり風情のある一場となったと思っいます。
大道具さんが下絵を持ってきてくださった時に隅田川の絵がありなにか物足りない気がしたので中村座とスカイツリー(に見立てた火の見櫓)を書き足してもらいました。
舞台上手(右)に中村座、下手(左)にスカイツリー(に見立てた火の見櫓)が描き込まれています。気づいた方はいらっしゃらないと思うのですが、ちょっとした遊び心です。
これから10年20年後の歌舞伎を背負って立つであろう皆さん。お客様同様私も楽しみです。

さて私事ですが母校・慶應高校の甲子園出場に胸踊らせ歌舞伎座の楽屋から声援を送っていましたが残念ながら二回戦敗退となってしまいました。残念ではありますが画面に写った後輩たちは達成感に溢れ人生の中で得難い貴重な体験をしたと思います。出場できなかった部員のみんなそして応援してくれた学友達と生涯の友としてこの経験を活かしてほしいと願っています。

また先日、津川雅彦さんの訃報に接し心よりお悔やみ申し上げます。
芸能の世界に生まれた先輩として良きアドバイスまたエールを沢山送ってくださいました。
幼少の頃より歌舞伎とも接しご自身の役者・演出家としての感覚でやさしく歌舞伎を見てくださっていました。心から芸を愛してらしたのだと思います。今年亡くなられた奥様の朝丘雪路さんも日本舞踊深水流の家元としても活躍され父も何度も共演をし深川マンボという名作を生み出されています。宝塚では母とほぼ同期でしたので身近に感じていました。
心よりご冥福をお祈りいたします。

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コメント

花魁草は初めて観る作品で、特に予習もせずに観たのですが、お蝶さんが橋の上から叫ぶ姿がとても切なくて涙しました。
幸ちゃんが立派な役者になって戻ってきた時に、庭に咲いていた花魁草も印象的でした。
雨乞其角、背景には気が付かなかったです。
今日確認してみようと思います。

千穐楽おめでとうございます。

お蝶さん、大好きなお役の1つになりました。
とてもかわいくていじらしくて切なかったです。
冒頭の無邪気さから変わって、後半の若さ特有の熱さや勢いだけでは行けないところがとてもリアルでした。
ただ、最後はやっぱりと幸太郎と会わせてあげたかったです。

雨乞其角の中村座、発見できました。
幟にもお名前が入っていておもしろいなと思いました。
今度はスカイツリーにも注目してみます。
涼しげなお衣装で、ほれぼれと拝見しました(*´ω`*)
かなめさんと祥馬くんもご一緒に出ていらっしゃったのでうれしかったです。

本日も楽しみにしております!

「演ってよかった!」の一言を読んで鳥肌が立ちました。「花魁草」、何度も拝見しました。お蝶さんの気持ちが痛いほど伝わってきて真に迫るものがありました。「花魁草ロス」といった感じです。またいつか拝見したと思っています。

十月芸術祭も楽しみに伺います。厳しい残暑が続きますのでお身体にお気を付けてお過ごしください。

千穐楽おめでとうございます

台風接近に、飛行機は飛ぶのか?新幹線は止まりはしないか?と
不安一杯に東京までの経路を考えながら、やっとたどり着いた歌舞伎座

25日に通しで観劇いたしました

楽しみだったのは『花魁草』です
福助さんのお蝶で上演された時に見ており大好きな舞台です

その時の”お栄さん”もよく覚えております
落ち着きのある堂々とした女将さんの印象でした
話の筋が分かるので
座元勘左衛門の彌十郎さんが出ていらしただけで、もうたまらなくなり
涙がこぼれました

今回の舞台
扇雀さんのお蝶さんは
お松さんに対しての細かな表情と
座元勘左衛門の対しての細かな表情が
はっきりと客席に伝わり、その表情から心の声が聞こえてくるようです

幸太郎への思い・愛しさと切なさと自分との葛藤

橋の上から幸太郎を見ているお蝶さんはその姿、形から
空白の時間をちゃんと生きてきたことを強く物語り、品格さえ感じました


これほどまでに優しさの伝わってくる舞台は心を浄化して
清清しい気持ちになりました

是非、関西でも上演してくださいますようにお願い致します


そして『雨乞其角』
舞台に登場することの多い其角ですが、分かりやすい展開と
オールスター若手俳優との共演が面白かったです

かなめさんのお隣に祥馬君がいらして
あの小さな祥馬君がこんなに大きくなったんだとビックリ!!

親戚の子供たちの成長を見るような気持ちです☆

千穐楽おめでとうございます。
花魁草、拝見いたしました。お蝶さんの心の揺れ動きが切なくて、何度も涙がこみ上げてきました。蓮っ葉でコミカルでかわいらしくて情熱的で、でも理性的なとても魅力的な女性でした。獅童さん、幸四郎さん、梅枝さんも素晴らしくて、何日も余韻に浸れる素晴らしいお芝居でした。ありがとうございました。

次のお舞台も楽しみにしております。

納涼歌舞伎は、1部と2部を拝見致しました♪
「花魁草」は初めての観劇でしたが、しんみりと、余韻の残る良いお芝居でした。お蝶さんの純粋で一途な気持ちと幸ちゃんを思いやって身を引いてしまう姿に切なさと・・やるせなさ・・橋の上でのお蝶さんの最後の語りが胸に迫りました。上方ならではの「はんなりした風情」を江戸のお話ながら、扇雀さんから感じられ、とても良かったです!
「心中月夜星野屋」は、あんなに笑った心中話も珍しく爆笑!
「雨乞其角」は、御曹司の若手がたくさん登場して、それぞれの若手を拝見しながら、それぞれのお父様の顔が浮かんできて・・時の流れを感じました。出演者に気を取られて(笑)、背景については何にも記憶にない私です。失礼致しました。
今年の納涼歌舞伎は、どの部を見ても満足度が高い演目がずらっと並んだ充実の夏でした。
お疲れ様でした。そして、素敵なお芝居、ありがとう御座いました。特にお蝶さんには、心が浄化されました♪

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