中村扇雀の公式ブログ

「ロシア公演行ってきました」

2018年10月11日

8月の歌舞伎座公演を終え、当初今年唯一の休演月と決めていた9月ですが、昨年の夏にこの訪露公演の出演のお誘いを受け、人生初めてのロシアに行って参りました。

歌舞伎美人にも記事が掲載されていますので公演の詳細はそちらをご覧くださるとお分かりになると思います。

https://www.kabuki-bito.jp/news/4982

過去には何度が海外公演は経験していますがロシアは訪問も初めてで非常に楽しみにしていました。

一言で感想を申しますとロシア公演は期待以上の素晴らしい日々でした。

ロシアにおける日本年というイベントのプログラムの中に組み込まれ、同時にチェイホフ演劇祭にも参加というロシア側の受け入れ体制が整っていたことも幸いしました。
また今年度ロシアW杯が開催され世界から多くの外国人を受け入れる為に英語表記や英語メニューなどが数多く増え、移動や買い物などに全く不自由を感じなかったことも良かったのだと思います。何しろロシア語は読めません。私達の英語アルファベットの知識では解読不可能で文字化けと読んでいました。しかしロシアの方の英語はわかりやすく英語が母国語ではない者同士が英語を使うと、お互い理解しようという気持ちが強く働きわかりあえるのではといつも感じます。

今回はモスクワでとサンクトペテルブルグの2都市で計11回の公演で、連日現地の方が劇場を埋めて下さり、舞台上部の字幕も慣れているのか反応がよく芝居をしっかり楽しんで下さっていたと肌で感じました。15年前の訪露公演の時は日本語から英語、英語からロシア語に翻訳されたらしく伝わり難かったのでその教訓を活かして今回は日本語から直接翻訳したそうです。イヤホンガイドの方が一人いらして随時対訳を見ながらスイッチングをして下さったのも功を奏したのだと思います。

モスクワ:モスソヴィエト劇場のカーテンコール

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モスソヴィエト劇場の外

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モスソヴィエト劇場の入口の門

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モスソヴィエト劇場の門から入ったアプローチ

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モスソヴィエト劇場正面(アプローチから公園の中を歩いてその奥に静かに佇んでいます)

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モスクワでは連日スタンディンクオベーションとなりカーテンコールでは多くの方がスマホをかざして前の方まで出てきて写真におさめて姿が微笑ましくもあり嬉しくもあり心に残る感動を味わうことができました。
サンクトペテルブルグのお客様はスタンディンクは一度しかなかったのですがブラボーの声を凄くかけて下さいました。

サンクトペテルブルグ:ボリショイドラマ劇場正面昼と夜

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ボリショイドラマ劇場には花道が設置されました

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モスクワは歌舞伎を本当に楽しみにして待っていてくださった感じでサンクトペテルブルグのお客様は歌舞伎を待っていたというより演劇としてしっかり集中して観ようという方が多かったのではと思っています。サンクトペテルブルグの劇場は通称BDTと呼ばれるボリショイドラマシアターという演劇専門の100年を超える由緒正しき劇場で、客席内に花道を作ってくださっていました。千穐楽の前の日にサンクトペテルブルグのフォーシーズンズホテル内のレストランに終演後行ったところ。そのお店のマネージャーらしき女性に今BDTに出演してきたと告げると、あなたはグレートサクセスをしたと驚きの表情で喜んでくれました。さしずめ歌舞伎座で外人が母国語で母国の演劇を上演したようなことだったのでしょうか。ちょっと誇らしい気持ちになったりお酒も進みました。

サンクトペテルブルグではあの有名なタス通信に呼ばれ記者会見をしてまいりました。

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中村扇雀読めません

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今回は「吃又」と「吉野山」の二演目を上演したのですが、音曲とともにドラマが進行したり舞踊劇にセリフがあったり、舞台上に音楽の演奏者が座っていたり、つけ打ちの音が突然入ったり、全員男だったり、何しろ自分達の常識の枠を超えたものを眼前にしてその時間を心底楽しんでいただいていたように思えます。「吃又」は奇跡が起こりハッピーエンドですので受け入れやすかったのだと感じています。外人の方は幕が開いただけでは通常拍手はいたしませんが「吉野山」では満開の桜の吉野山の背景を見て拍手が湧き上がっていたのには驚きました。素直に美しいと感じてくださったのだと思います。狐が人間に化けて自分の親の皮でできた小鼓を追っかけて主人の彼女のお供をしていてその主人は歴史に名を残した名将ということはお客様は理解していないと思いますが、何か素敵だったのだと思って頂いてるような気はしています。

サンクトペテルブルグの終演後のレセプションでロシア文化大臣より感謝状を頂き最高の思い出となりました。何が書いてあるのかはわかりません。

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ロシアは寒い国だと勝手に思い込んでいましたが、モスクワは連日半袖で歩いていました。
ここでも異常気象のようです。
ロシアのドモジェドヴォ空港に到着した日は25度を超える暖かさで半袖で大丈夫

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海外公演に行くと朝必ずその街を走ります。ジョギングですが、フルマラソンを2度完走している経験があるので走るのは嫌いではないのです。それに海外に行くと歩いてその街を知るのが一番なので必ず走っています。ニューヨーク、ボストン、ベルリン、ロンドン、ローマ等早朝は気持ちのいいもんです。どの街でも多くのジョガーとすれ違うのですが、モスクワはほとんど走っていません。何故でしょう。モスクワはマリオットグランドホテルに宿泊したのですが、そこから中心のトベルスカヤ通りを一直線に走りクレムリンを左回りで一周してボリショイ劇場を通り戻ってくるルートでおそらく6~7kmくらいだと思います。
サンクトペテルブルグはコリンシアネフスキーパレスホテルに宿泊しネフスキー大通りをエルミタージュ美術館に向かって直進しネヴァ川沿いを走りトロイツキー橋を渡りザヤーチィ島の周囲を走り宮殿橋を渡り再びエルミタージュ美術館に沿って河岸を走り抜けロシア美術館とミハイル宮殿の横を抜けネフスキー大通りに戻ってくるルートを走りました。8~9kmくらいでしょうか。走っいる人とすれ違いましたが少ないです。

ただエルミタージュ美術館の前の川でおじいちゃんが水泳のための準備運動をしていたのにはただただ驚きました。多分何十年も続けている健康法なのでしょう。まだ7時にもなっていませんでした!思わずiPhoneにおさめてしましました。

6:35分頃が日の出でしたのでまだ7時前です。

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おじいさんと別れた後の早朝のキヴァ川、エルミタージュ美術館の対岸ザヤーチィ島

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早朝の対岸からのエルミタージュ美術館
iPhoneのイヤホンのボリュウムスイッチがカメラのシャッターになるのご存知ですか?

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元々絵を見るのは好きで、モスクワではプーシキン美術館、サンクトペテルブルグではモスクワ美術館、そしてエルミタージュ美術館を楽しみにしていました。
公演は連日19時開演ですので昼間はたっぷり自分の時間があります。
iPhoneのヘルスケアの歩数を見ると連日二万歩超えで、帰国時は出国より1.5kgは減っていました。

プーシキン美術館ではロシアにおける日本年の開催の為か日本画多く展示してあり図らずも写楽が二点尾形光琳や歌麿などが展示してあり思わず釘付けとなり海外で改めて日本文化の素晴らしさを再認識させられました。

プーシキン美術館

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写楽・歌麿・光琳

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エルミタージュ美術館では一番好きな画家カラヴァジオの絵が一点所蔵してあるのでそれだけを楽しみに行ったのですが、なんとフランスに貸し出していて不在でした。それを見るのが最大の楽しみだったのにかなりのショックでエルミタージュ美術館の本館を後にしました。中国人観光客の団体がものすごく多くダ・ヴィンチの前も人だかりで落ちていて見られず失意のまま新館に足を運ぶと、フランス人画家では唯一好きと言って良いマティスが三部屋にわたり展示してあり彫刻も数点あり、ピカソの展示の多さと失意の中から喜びに転じました。皆さん、エルミタージュ美術館は別館も必見です!お忘れなく。


そして今回はマーブル美術館というところで特別展をやっていた現代ロシア人の夫婦が強烈なインパクトで2度足を運んでしまいました。何が良かったのかは説明できません。

マーブル美術館

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イゴール・ペストフとエカテリーナ・ペストフ

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二作品だけお見せします。

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賛否が分かれるというよりは苦手な方のほうが多いかも知れませんが、私はかなりの時間その展示室にいた気がします。テクニックと共にメッセージを感じようとしていたのだと思います。興味のある方はネットで見て下さい。作品を2点掲載いたします。

絵を見て歩くのは実に楽しいのですが中々釘付けにはならないものです。
しかし心が落ち着くというか美術館巡りは楽しい。

海外での楽しみは食事もそうでしょう。その土地に行って食文化に触れるのもその国を知る一歩ですよね。和食抜きが続いても大丈夫な方なのでその土地の料理やレストランに行くのはわくわくします。
英語メニューと共に写真を載せているレストランも多くこれは助かります。外国語の説明がよくわからず出てくるまでどんなものかドキドキして待っている経験は皆さん一度はおありだと思います。
ロシア料理のイメージはボルシチ、ピロシキ、サーモン、キャビア、ビーフ・ストロガノフそしてウォッカといったところでしょうか。
ちゃんとすべて食べてきました。予想以上に美味しい。どのレストランもえっなにこれというがっかりがない。これは嬉しい驚きでした。
日本がレストランのレベルは世界一だと思っていますが、ロシアもレベル高かった。長期に滞在する時の一番大事なことかも知れません。
今回の公演旅行が楽しい素晴らしい時間になったのもそのお陰かも知れません。
ただ、大使公邸にご招待いただいたときの日本蕎麦は日本を離れてから最初の和食だったので心にしみる美味しさだったのは、体が自然に欲していたのでしょう。

ラストナイトについに食べたキャビアは格別でした!

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また第二弾も報告します。

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コメント

ロシアご報告、堪能しました。
私も観劇露訪しようかどうか、迷っていましたので、行けばよかったなーと、お写真を見て思いました。
また機会があればロシアに行ってみたいです。

遅ればせながらロシアレポ楽しませて頂きました!
久々に海外公演を拝見しましたが、天井絵や椅子も凄く素敵な劇場でしたね。
素晴らしい劇場内装を背景に、花道の出から興奮して鳥肌立ちました!遠かったですが、観に行って良かったです。

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