2020年1月記事一覧
「酒屋「お園」「三勝」・夕霧名残の正月「夕霧」」
2020年1月19日
父の休演で「酒屋」でお園と三勝の二役を努めることとなった今月の松竹座
祖父と父はお園から半七に変わるやり方でしたのでお園を努める時には是非そうしたいと思っていましたが、今回は兄の鴈治郎が宗岸と半七が変わることになりました。
期せずして父の休演が決まり私が女方二役を変わる早変わりとなってしまいました。
成駒家のやり方としては頰被りを見せたいので次回お園を努める機会がございましたら祖父、父の演り方を踏襲して半七との2役を努めたいと思っています。父の半七で三勝を努めていますのでその息は十分にわかっています。上方は兼ねると言いますか立役と女方両方努めるの事が多くなっていますので、若手の頃に女方の修行を積んでいますと立役に回った時に全てが飲み込めているのです。父の相手役を多く努めているとそれが生きていきます。
父も祖父の相手を多く努めて体得していったのだと思います。私もその経験が生きてきているのです。
初役のお園ですが、三勝を努めた時に十分父のお園を見ていますので参考とするベースはできています。文楽でも名高いこのお園の1人になった時のくどきの部分で一番大切にしていることは義太夫の言葉です。自分の心情を語ってくれています。しかし、自分自身(お園)の動きは日常生活で普通にしているかのような動きが中心です。そこで、自分の気持ちを三味線の調べに乗りながら吐露していくところにやりがいや楽しさや難しさを日々感じながらお園さん自身に同化していっています。
ご覧いただいたお客様のお一人に体調は悪くありませんかと言われ、特に体調は悪くないですとお答えしたところ。屋台に入ってから息遣いもしんどそうで疲れている感じかとおっしゃられたのですか、それはお園さんが茜家に戻ってくることへの心苦しさとか申し訳なさとか心の中での苦しみを体で表現していたつもりなのですが、体調お悪いのではと言われたことは逆にお園としては体調悪いですと言いたいので、ある意味嬉しい言葉でした。
お芝居はあくまでもリアルでなくてはいけません。少なくとも私が女性を演じる時点で嘘をついているわけですからそれを誠に見せるには自我を排除しその役にななり切ることがまず第一歩だと思っています。それをお客様に伝えることの難しさが、逆に役作りの最大の楽しみだなのです。舞台に登場する以前からその役の置かれた状況のあらゆる情報をインプットしてそして、舞台に登場してからはすべての言葉が新しい情報としてオンタイムで耳に入ってきてそれに反応するこれが基本です。
また役作りは化粧をするときから始まっているものです。今月は女方2役(お園・夕霧)を努めていますがその役の眉毛やめはり(目尻の紅)が随分違ってきます。
三勝は早変わりで衣装と鬘は変えていますが化粧はそのまま回しています。
一週間ほど前から声帯が炎症を起こし耳鼻咽喉科に通院しているのですが、高音が出づらくなっていてお客様に聞きづらい台詞をお聞かせしていることを、この場を借りてお詫びいたします。
また3日前より竹本の三味線淳一郎さんがインフルエンザを発症して急遽公彦さんに代わっています。皆様も体調には十分留意なさって下さい。
前回のブログにも掲載の通り舞台写真入りのパンフレットが販売になりましたのでご希望の方はご連絡下さい。
写真:松竹座
また「酒屋」の特別ポスターをB1サイズで一枚¥3.000で松竹座で販売しています。
父が休演となってしまいましたのである意味レアなホースターとなりました。
サイズは大きいのですが、こちらも是非劇場で記念にご購入下さい。
ポスターは劇場での販売となっています。
「令和2年初春大歌舞伎松竹座舞台写真入りプログラム販売」
2020年1月19日
今月の舞台写真掲載のプログラムが昨日から劇場で販売が始まりましので、私がお名前を書いてサインしたものをご希望の方にご郵送致します。
一部¥2.110(¥1800+送料¥310・消費税込み)
尚、劇場受け渡しご希望の方は引換希望とお申込みの際にお知らせ頂ければ定価¥1.800
にてお渡し致します。
ご希望の方はお名前ご住所を明記のうえ
下記のアドレスに部数を添えてお申し込み下さい。
入金方法を折り返しお知らせします。入金確認後に郵送させて頂きます。
ご応募お待ちしています。
締め切りは27日千穐楽正午(12時)とさせて頂きます。
「令和2年初春大歌舞伎大阪松竹座初日」
2020年1月 3日
令和になって最初の新年を迎え例年より1日遅い初日を本日3日に迎えました。
本年も宜しくお願い申し上げます。
今年は還暦、子年生まれの年男です。12月誕生日ですのでほぼ1年間は59歳ですが節目の年
を迎えました。
そして扇雀襲名から25年目となります。父は二代目として50年間扇雀を名乗っていましたのでやっと半分にたどり着いたことになります。
今年は成田屋襲名やオリンピック・パラリンピックの年となり歌舞伎界も例年と比べ数々のイベントが控えています。
さて、松竹座の新春の公演は曽祖父初代鴈治郎の作った「九十九折」で幕を開けます。
新しい物好きの曽祖父が何か趣向をと常に考えていた中で作り上げた当時の新作歌舞伎です。新口村の義太夫に乗せての幕切れは上方らしさを大事にした曽祖父らしい演出です。
幸四郎さんと壱太郎そして愛之助さんと年代の揃った3人の舞台です。
そして「大津絵道成寺」は愛之助さんの変化舞踊で華やかな舞台がお正月気分を盛り上げます。虎之介が犬の役で愛之助さんの座頭と絡みます。部屋子の祥馬も関西の4人の部屋子の1人として唐子役で出演致します。
3つ目の「酒屋」のお園と三勝の二役に私は出演致します。
事前の報道でご存知かと思いますが父の藤十郎が休演となり私が三勝も務めることとなりました。先月京都南座公演中に転倒して腰の骨を骨折していたのですが、お役が慶寿院でしたのでコルセットをしたまま座って舞台を務めておりました。三勝も衣装を付けてのお稽古をしたのですがやはり立っていることが辛く出演を見合わせる運びとなりました。
東京に戻って治療に専念させて頂きます。皆様にはご迷惑をおかけいたしましてこの場をお借りしてお詫び申し上げます。
このお園の役はかねてから演じたい役の一つでした。「今頃は半七さん」の台詞で有名な子の役は切ない女心を義太夫に乗せて演じる上方ならではの演目です。初役で務めますが父のお園を三勝を務めたときにずっと見ていましたので初役のような気が致しません。
父はお園と半七の2役を務めるやり方ですが計らずも今回は三勝との2役を務めることとなりました。これは先代歌右衛門の叔父さんもなさったやり方です。
離れた夫をじっと想う心が伝わることを目指していますので是非劇場へお運び下さい。
昨年は立役が多い年となりましたが年初から上方の女方の代表的な役は楽しみです。
華やかさには欠ける演目ですがじっくりとドラマを味わって頂きたしと思っています。
夜の部は愛之助さん演じる義経千本桜の「四の切」で幕を開けます。これぞ歌舞伎という演目ですのでお正月にふさわしい演目です。
2番目の父が坂田藤十郎襲名の時に復活させた「夕霧名残の正月」で兄の鴈治郎が務める藤屋伊左衛門の相手、夕霧を務めます。
「吉田屋」の原型にもなった演目です。時間は短い演目ですでに死んでしまった夕霧の部分は舞踊のような構成で今回は振り付けの藤間御宗家と相談してまさに夢の中の幻想のような場面に創り上げました。
一瞬の伊左衛門の夢です。
そして追い出しの3つ目は幸四郎さんの作った「大當り伏見の富くじ」。
昨日舞台稽古を拝見しましたが新作歌舞伎を念頭に理屈抜きに楽しんで下さい。
いろんな趣向あり兄の女方も珍しく最後は宝塚のようなフィナーレが待っています。
本日から27日まで大阪松竹座。幕見席もありますので是非劇場で歌舞伎の世界を楽しんで下さい。お待ちしてます。
https://www.kabuki-bito.jp/news/5967/
本年も宜しくお願い致します!
写真:松竹株式会社