2020年10月記事一覧
「ご冥福をお祈りいたします」
2020年10月11日
尾上菊十郎さんが88歳でご逝去されました。
菊五郎劇団に属してらっしゃいましたが、ご一緒することも多く立師としてコクーン歌舞伎や平成中村座にも助言を数多くしてくださいました。
「昔はこうだったんですよ」と言いながら私たちの知らないことを気軽に話して下さり勉強になることが数多くあり、歌舞伎を後世に残すためには口伝でものを教えてもらうことが本当に大切なのだと痛感したものです。立ち回りのことを後輩にしっかり残してくださった功績は計り知れません。
感謝と共に心よりご冥福をお祈りいたします。
「神野美伽さんと」
2020年10月 6日
神野美伽さんと対談をさせて頂き、その記事がご本人の会報に掲載されました。
許可を頂いたのでご一読下さい。コピーや転載は禁止ですのでよろしくお願い致します。
美伽さんは共通の友人が歌舞伎座の楽屋に以前お連れくださってからのご縁です。
今回はこちらも共通の友人である千地泰弘様のお声がけで対談が実現しました。
千地先生は伯母の中村玉緒の着物も長年デザインしてくださっている友禅作家の方で、普段からとても懇意にしていて、お会いする度にご縁が深まる大好きな人生の先輩です。
演歌と歌舞伎、ジャンルは違いますが、共通する話題は多く誌面では収まり切れないほど話は盛り上がりました。お互いコロナ禍で問題は山積みですが、気持ちを切らさず頑張って行きましよう。
「かやもり農園の新米」
2020年10月 6日
今年も懇意にしているかやもり農園の萱森教之さんから「新米」を送っていただきました。
「伝」というブランドの新潟コシヒカリです。
鮭の肥料や植酸栽培という珍しい栽培方法でお米を育てる300年の歴史を持つ農家で、当主の萱森さんとはだいぶ以前に知人の紹介で知り合い、新潟に行くたびにお世話になっています。温厚な人柄でお米のことを丁寧に楽しそうに教えて下さる素敵な方です。
お米の炊き方にもこだわりがあり、リンク先のホームページから見られますのでこちらも参考にして下さい。
「国立劇場初日」
2020年10月 5日
1月以来の国立劇場の初日が4日に開きました。
公演が出来る事は嬉しい限りです。
が、8月の歌舞伎座と同じように席は一つおきでそれぞれの座れない席には布が巻いてあります。そして大向うも禁止のまま。その分お客様はいつもに増して大きな拍手を送って下さいます。しかし、床に座っている太夫さんとお三味線の二人は黒い布で顔を覆ったまの不思議な出で立ちは変わらず。
「源太勘当」は場面が二つなのですかそれも一つに集約して転換で大道具さん達と近づかない演出に変更しての上演。
せめてマスクをしたままの大向うは許されないのかと心の中で訴えています。
口に出したら今は感染症の先生の指導に従っていますとの返事しか返ってきません。
感染症拡散は重大問題です。このまま永久に続くことは考えにくいですが、毎日渋谷を歩いている一都民としては、あの人が多く行き交う雑踏に引き換え、劇場内での束縛された世界から一刻も早く解放されたい。
座席に布が巻いていない客席を取り戻したい。お客様にもご不便を強いての上演は本当に心苦しい限りです。
そんな中、初役で腰元千鳥を努めています。
歌舞伎ではカットされていますが千鳥人柄の表現に"愛嬌あって可愛ゆらし"という一文がありますので、そこを目指してひたすら源太様を好きで努めてゆきます。
長い事舞台での女方の声を出していない上に、客席の扉が開放されているのは音が抜けていくので、その点に充分神経を使っています。
幸四郎さんの新作舞踊も大変楽しいようで、というのは稽古見られていないのです。
初日を客席から見た虎之介の伝言なのですが、相変わらず楽屋にしんぞくも入れません。
終演後に劇場外で聞きました。
自分の出ていない演目の時には、稽古場や劇場にいられません。
同じ演目に出ている役者同士も楽屋の行き来は禁止です。
平次役の幸四郎さんにはラインで芝居の修正箇所はやり取りしました。楽屋内で、、、
2部に出演の皆さんとはいまだにどなたも会ってません。
こんな事が起こるなんて想像もしませんでした。
何はともあれ国立劇場での歌舞伎が再開されました。
27日の千穐楽まで自分自身を含めクラスターが出ない事を願うばかりです。
ご来場心からお待ちしています。
「「勝者の条件」」
2020年10月 1日
ゴルフネットワーク 167CH/217CH
というCSのチャンネルで明日から始まる「勝者の条件」という新番組でナレーションを担当しています。
「勝者の条件」放送日時
第1回目 2020年10月2日 (金)22:00〜22:30
第2回目 2020年10月9日 (金)22:00〜22:30
第3回目 2020年10月16日(金)22:00〜22:30
第4回目 2020年10月23日(金)22:00〜22:30
以降半年間にわたって放送します。
ゴルフ好きの方のチャンネルですが、ゴルフに興味のない方も見てください〜
声だけです、、
「十月国立劇場再開」
2020年10月 1日
コロナ禍で生活が一変し、町に出れば殆どの人が思い思いのマスクで顔を覆い行き交っている。映画のロケを敢行している様な風景が当たり前になって半年は過ぎようとしています。
8月より再開した歌舞伎公演が正常な状況で上演されるのはいつのことなのだろう。
6月の国立劇場で、松緑さんと歌舞伎鑑賞教室で共演する予定だった公演も中止となり、その国立劇場の歌舞伎公演が当月めでたく再開され、国立劇場へ当初の予定より4ヶ月伸びての出演となりました。演目や出演者は変わりましたが、8月の歌舞伎座の再開時に続いての出演は嬉しい限りです。
演目は「ひらかな盛衰-源太勘当-」
今回の腰元千鳥の役は初役。
二十代半ばの時に公文協の巡業で父が演っていた時の印象が強く残っている。源太は梅幸の叔父さんで平次が富十郎のお兄さん。そして母延寿は先代の権十郎の叔父さんが務めてらっしゃいました。父は五十代半ばですので今の私より少し若かったと記憶しています。
可愛らしい腰元でした。義太夫の糸に乗っての芝居をワクワクして見ていたのを今でもはっきり覚えています。
初役の今回は、まず義太夫の演目の時はいつもやる手順として文楽の同演目を勉強することから始めます。映像、あるいは録音を床本と照らし合わせながらまず見たり聞いたりします。そして、歌舞伎の上演台本と照らし合わせます。
同演目でも歌舞伎の脚本はだいぶ脚色されていることが殆どです。脚色と言っても歌舞伎の入れごとという言い方をしますが、役者が自らの口でセリフを言いますので、歌舞伎独特のおかしみの部分ですとか、また、長い説明部分や主役の人物以外の説明台詞はは多少省いたりもしています。その元の部分の確認が最初の作業です。
次に自分が努める役の役柄や雰囲気を大夫さんの語りから感じとります。そして、人間として努めるときの参考にします。いわゆる役作りと言うのでしょうか。
そして、義太夫訛りを勉強していきます。
これが済んだ段階で歌舞伎の準備です。
役の動きですが、祖父の弟子であった故中村桜彩さんが父の為に細かく動きを書いたノートが残っています。これは曽祖父初代中村鴈治郎の弟子であった故中村松若さんという人が松若ノートというものを残していて(碁盤太平記を復活した時には大いに役に立ちました)それを見習って作られたものです。日本舞踊で言う踊りの譜のようなものです。
それを参考にイメージを作り次はビデオ映像という現代の力を使います。
今回拝見した腰元千鳥は先代雀右衛門の叔父さん、勘九郎時代の哲明さん、澤村藤十郎さん
、芝雀時代の現雀右衛門さん、今回延寿を努められる魁春のお兄さんと5人の方の千鳥を拝見しました。父の映像は残っていません。脳裏には微かに残っています。
以上の準備で自主稽古をして稽古に臨みます。
昨日と今日の2日間が附立と呼ばれ、稽古着でお稽古をいたします。この附立の意味は狂言作者(拍子木を打ったり、演目を書いたり)がセリフを付けてくれるという意味です。この稽古ではセリフをもし詰まったときにはその場でセリフを付けてくれます。英語で言うプロンプターの役目です。
この2日間が終わると、明日は舞台の上で道具を飾っての稽古ですが、まだ稽古着のままです。明後日の初日前日に初日どおりの舞台稽古が行われます。
計4回の稽古で初役ですが初日を迎えます。些かハードですが、現実です。
4日の初日に向けて稽古の録音を聞き返して復習し備えます。
義太夫狂言らしさを大切に千鳥を作っていきます。
今回の参考資料