「「旅」」
2020年12月19日
本日12月19日例年より一足早い京都顔見世興行の千穐楽をコロナによる休演日もなく無事に迎えました。
年末に1月興行の稽古はありますが、お客様の前での仕事納めとなります。
今年はコロナの影響直撃で数えるほどしか舞台に立てず、務めた役の数も僅かでしたが、私自身は何とか健康を維持し努めることができました。
大向うもなく、客席も間引き、演出も変え、公演時間を短縮し、山台にのる演奏者は黒の布で顔を覆い、会話を抑制して頂き、食堂や物販の楽しみも減らして頂きもう数え切れない程の制約の中での上演にご来場頂いたことへ心から感謝申し上げます。
元の状態に戻るにはどれだけの時間が必要なのか全く予見できないことのもどかしさは、ストレスとなって溜まっていることは間違いありません。平常心を保つことの難しさは並大抵ではありませんが、社会全体がそうなっているので受け入れるしかありません。
そんな中でも今年もご来場くださった皆様に、改めて感謝申し上げます。
ありがとうございました。
先日、今年の漢字「密」が発表されました。
私なりに今年の漢字を考えたところ
「旅」
という言葉が浮かんできました。
11月12日10時42分
父が旅立ちました。
そして今年は旅が全くできませんでした。
歌舞伎興行も12月の南座で旅の公演が再開しました。
そして12月19日に還暦を迎え、父が亡くなった事と60歳を迎えた事で新たな旅がスタートした思いです。
旅をすることで見聞を広め多くの新しい出会いがあり一段一段成長し、人生といいう長い旅を自分で引いて行くレールの上をひた走っているのでしょう。
長い旅を終えた父から孫の虎之介が入れ替わるように顔見世に初出演し、まねきの看板がその変化を映し出していました。
まだ旅の途中ですが大きな駅に今立ち止まり次に乗り込む列車を決めている最中です。
その終着点で悔いのない旅を続けて行きたい。
父の死を迎え新たに力が湧く思いです。
今月の「吃又」のおとくは新たな旅の第一歩でしたが、前回お得を演じた後に又平を経験してからのおとくでしたので、又平の心の変化をより汲み取れるのではと思っていました。
けれども又平の創り方が違うとそうも言ってられません。夫婦愛を全面に出そうと思っていましたが、兄の又平の創り方ですとどうしても母性愛の強いおとくになっていたと思います。それも一つの作品としてのあり方です。
東京の歌舞伎座でも吃又が同時上演されていたので双方ご覧になった方はその違いを目の当たりにしたと思います。
またその役者によって変わるところが、また歌舞伎の持っている大きな魅力の一つなんでしょう。
本当に以前の日々に戻ることを願って還暦誕生日当日に、今年最後の千穐楽を迎えました。
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